秒速5センチメートル
秒速5センチメートル a chain of short stories about their distance
この作品には色んな speed がある。タイトルはその speed を点出し、「生きるスピード」や貴樹の「二人はただ心の距離を増やすだけ」、もしくは「どんなスピードでも君に追いつけない」と言う気持ちを表す。今度のネタは普通の日常だ(アニメを作ることを日常にする自分を示すって新海が後の interview で)。国連宇宙軍も蝦夷の「塔」もない。宇宙ものは…まあ、まだあるんだが、それもそれで普通だ。もしかしたら、宇宙ものは一種の symbol じゃないか?シナリオは…相当典型的な男の子の片思いだ。叶わない夢の物語、Le Comte de Monte-Cristoのように、金色夜叉のように。こんな物語には、男は何時でも前へ進めなくて、ただ元の所に止まり、漠然と生き残る。ただ元の人に思いを寄せて…届けられないのに。もっと極端になれば、その命を全て一人の女に費やすこともあるのだろう。(今作中、貴樹はとうとう彼女を作った。だが、心は通わなかった。)そしてその叶わない過去を追い続け、やがて全てを失う。新海の作品は元々淡白なものだから、金色夜叉のようにドラマチックな怨みも、人が死んだなんてことも、全然出てこないんだ。でも逆に現実の酷さを静かに語れる。
「この数年間、とにかく前に進みたくて」この前のほしのこえもそのような台詞があった気がします。新海は本当にこんな男を待たせるものが好きだね。ハッピーエンドはできないんだそう。それは、こんな悲劇こそ人の心に残れる、優美と言う感覚を呼び戻すのじゃないのか?
はっきり言って、水橋研二さんと近藤好美さんの声はあんまり子供らしくないんだね。その幼いトーンが感じないんだ。(素人の声優では?とさえ思った。すみません。)でも新海は満足したといった。それはそれで。まあ、画面の緻密さと並べば、そんなのは大したことないんだ。それに、前の作品よりキャラ顔がよくなった。これでたとえトップクラスとは言えなくても、綺麗と言ってもいいよね。キャラクターデザインの西村貴世に感謝だ。
緻密さと言えば、深青の夕景、空のgradientはすごくいい感じ。第二話の海はそこまでしないのに、どうしていつも空だけ?ロケハンはKANON以来時々耳に入る話題が、今度は確かに多いな。「感情移入しやすい」と狙ったが、外国人の私にはさっぱり。「こだわっている感覚がない」、「ディテールを省いています」と新海がいったが、ここまでよく出来たのも、他のアニメは全然付いていけないね。(制作時間があまりにも違うんだ。)
駅で貴樹が電車を待ってるシーンを見るとどうしても違和感を覚えますね。確かに日本では皆順番を待つが、ここにはそんなしきたりはないよ。(いや、あるんだが、従う人ほとんど見かけないんだ。)皆ぐるぐるっとね。民族性以外、私の住んだ街の電車は正確に定められた所で止まるとは限らないのも考える。いや、これでも民族性かな?職員も差不多先生とは考いたくないんだが。
この手のシナリオは何時も女の子が先に嫁ぎ、幸せをつかもうとする。(ある評価が面白かった。「男の恋愛は名前を付けて保存だが、女の恋愛は上書き保存だぜ」だっと。他にも「男は小学生の頃から秒速5センチメートルぐらいしか進歩していないのに、女のほうはどんどんどんどん先に行ってしまうのだ」などなど。)多分男性は社会的に経済地位が自由的のも関係あるんじゃないのか。女の子は遅れば、老後の安逸のチャンスを逃されるだけ。愛よりパンだ。でも、それは現実と知りながら、あの指輪を見た、確信してた時、一瞬、とても切なくなった。私もまだまだ� ��い男だね。第三話のこの後は、この chain の中で、私の心が一番痛む話。感傷に浸るのはいいが、この世には元々宿命的な恋なんてないんだ。あれは若いものに見せかけの映画や小説やアニメのなかしか探せない夢のまた夢だ。現実の中に、こんなのがあると言っても神のちょっぴりな悪戯のようなもの。それにあれは本当の試練を受けなかった仮相とでも言えるのだろう。それでも人は皆満足した。
だから、約束を交わした幼馴染たちよ!もし異変に遭って、離れ離れになった、または二人の間に強い絆が結ばれていないときは覚悟する方がいいよ。二人は身に纏った本質しかこの世界に抗う術ないんだ。それはね、そんな若くで、襲い掛かる変化に向かい合う方法を持つ、土壇場で本当に大切なことを守りきれる者はあんまり、少ないから。
「コスモナウト」は貴樹の執念を示すためにあったのかね(違うんだが)。二人の結末に私が言えるのはただ、もしそんなに彼女が気に掛かるのなら、手を離すことなく、確り抱き締めよう。愛を惜しむことなく語り合おう。一言「俺を待ってくれない?君を手放せしたくないんだ。いつかきっと君を迎えに…」と言ってやってもいいじゃない?この、根性なしが。諦めたら得られるものではない。だから行動せよ。諦めなければ、求めるものもすぐそこだ。現実はただそんな醜い、いや、現実らしいことだけ。
最後に貴樹は心を解放したと思う方もあるんだろう。しかし私はそうおもえない。彼はこの先もそんな悲しみのかけらを持ち続けて行くのだろう。そう。たとえ前へ進むとしても。救いなんてないんだ。意外がない限り、この先十数年も(もしそこまで歩けるのなら)変われるものはない。
天門の音楽は前から気になった。静かで、旋律もいい。ピアノで演奏するのは好きなようで、常にピアノ曲を入れる。ただ、アレンジというより、同じ旋律が繰り返しのような感じがした。アレンジのつもりかな?そういえばこの前「雲のむこう、約束の場所」オリジナルサウンドトラックもそうだった。
山崎まさよしの「One more time, One more chance」は第一話その時代の唄だと分かった。この唄が流しだした時、曲の境地をもう一度、違う意味で解釈したと思った。
貴樹はもしかしたら、最初からやけになって、明里と結ばれる可能性さえも夢みていないのじゃないか?(もしかしたら、もう彼女が結婚したことも知ったんだじゃないの?彼女は彼の気持ちを気付いていないんだがね。)それで本当に駄目人間になって、最後はやっと自分をその虚しさから解放したいと思って。
しかし彼はそのまま、やはりあの傷から逃れることはないと思う。その悲しみから抜け出すには切っ掛けが必要だと思うね。
前は言った。貴樹と共感することは私の甘さを示している。と言うことは、私の心にまだ隙があるから。まだまだです。
どうやら私は自・他動詞の扱いにまだ慣れていないです。